契約不適合責任とは、簡単にいうと「契約内容と異なるものを引渡した場合売主に課される責任」のことです。
例えば、雨漏りはありませんと契約書に書かれているのに引渡した後雨漏りが発見された場合や、契約書にエアコンありと記載しているのにエアコンがなかった場合などが該当します。
このように契約書に記載された内容と引渡された物件に相違があった場合は「契約不適合」と判断され、買主は売主に対し、責任を追及することができます。
契約不適合により買主が売主に追及できる権利は以下の4つです。
① | 追完請求権 |
②(A又はBどちらか実行可) |
A 代金減額請求 B 契約解除権 |
③ | 損害賠償請求権(※損害を受けた場合) |
以下、それぞれの権利を詳しく説明していきます。
①追完請求権
追完請求権とは、契約に不適合があった場合に、買主が売主に対し損傷部分の修理を求めたり、代わりのものを引き渡しを求めることができる権利です。
例えば雨漏りはありませんと契約書に記載していたのに入居して一か月後雨漏りが発見された場合、買主は売主に対し、雨漏りの修理を求めることができます。
買主から追完請求された場合、売主は契約内容に適合するよう修理をしなければなりません。
買主がこの追完請求をしたにも関わらず、売主がその対応をしなかった場合、買主は②ーA代金減額請求 又は ②ーB契約解除権のどちらかを実行できることになります。
②ーA 代金減額請求
代金減額請求は、名前の通り、売買代金の減額を請求することができる権利です。
簡単にいうと、修理しなくてもいいから支払った代金を減額して(一部を返して)ほしいということです。
①の事例でいいますと、買主が売主に対し雨漏りの修理を求めた(追完請求した)が、売主はこの追完請求の通知を何度も無視続けた場合、買主は売買代金の減額を請求することができるのです。
追完請求を無視していると、売主は売買代金の減額を求められる可能性がでてきます。
②ーB 契約解除権
追完請求したにも関わらず売主が対応しない場合、買主は上記②ーA代金減額請求か、あるいは②ーB契約解除権のどちらかを実行できます。
ここでいう契約解除権とは、引渡されたものが契約内容と異なるので、契約自体なかったことにしてくださいということです
買主の契約解除権が実行されると、強制的に契約は解除されます。
結果、買主は引渡された不動産を売主へ返し、売主は受領した売買代金を買主に返さなければならなくなります。
買主が契約解除権を実行するためには、売主に対し相当な期間を定めて追完請求する必要があります。
ただ、躯体の対部分が完全に損傷しているなど、到底修理できない場合は、無催告で解除できる場合もあります。
③損害賠償請求権
例えば雨漏りによって家具や家電に損害が生じてしまった場合、買主は売主に対して損害賠償を請求することができます。
簡単にいうと、契約不適合によって生じた損害を、金銭で補ってくれるよう求めることです。
ただし、契約不適合による損害賠償請求は、売主に故意・過失がない場合は請求することができません。
売主が故意に隠した場合や、売主の過失によって生じた損害じゃない場合は、買主は損害賠償請求できないのでその点は注意が必要です。
契約不適合責任の免責 |
以上が契約不適合により買主が請求できる権利であり、売主が負う責任ですが、特約をつけることにより売主の契約不適合責任を免責することができます。
ただし、免責できるか否かは条件によって変わってきます。以下、説明していきます。
■売主が一般個人の場合
買主、売主双方が合意していれば、売主の契約不適合責任を免責することが可能です。
以下は売主の契約不適合が生じる期限と箇所を限定して、一部免責した条文です。
本物件の建物等は建築後相当年数を経過し老朽化が進んでいるため、本契約書○条の規定にかかわらず、引渡完了日から3ヶ月以内に通知を受けたものにかぎり契約不適合責任を負い、下記の点を除き売主は建物等に関して一切の契約不適合責任を負わないものとします。 ① 雨漏り ② シロアリの害 ③ 建築構造上主要な部位の木部の腐食 ④ 給排水管(敷地内埋設給排水管を含む)の故障 |
■売主が宅建業者の場合
売主が宅建業者の場合は、少なくとも2年間は契約不適合責任を負わなければならないという定めがあります。
従って、買主は購入後2年以内に契約不適合を通知すれば保証が受けられます。
■不動産会社へ売却する場合
個人の売主が宅建業者(不動産買取業者)へ売却する場合は、たいていの場合売主の契約不適合責任が免責されます。
そもそも契約不適合責任は買主と売主が合意していれば免責できるものであり、宅建業者(不動産買取業者)は不動産のプロであるため、個人売主に責任を負わせる必要がありません。
以上のことから、宅建業者へ売却する(買取してもらう)場合は、売主の契約不適合責任が免責されるケースが多く、それがスタンダードになっているのが現状です。
売主の契約不適合責任が問われるのが面倒、もしくは問われる可能性が高い物件の売却を検討されている方は、不動産会社への買取を選択される方も多いです。